カタカナ英語「レガシー Legacy」

今朝の日経新聞、「染みついたレガシー打破」という小見出しを見て読み始めると、みずほフィナンシャルグループを事例として、日本企業でも退職者の再雇用気運が高まっているという内容でした。 たしかに多くの日本企業では、会社組織という狭苦しいリーグ内で熾烈なトーナメント競争を競わせ、そのリーグから出た社員は「脱落者」、ひどい時には「裏切り者」という烙印を押され、リーグへの復活はかないませんでした。

この記事を読んだときに、私がすぐに思い出したのは某世界的ホテルチェーンの総支配人が私に言った言葉でした。「退職者が出たら、原則として勤務最終日、退職手続き完了後に私の部屋に来てもらう。そこには上司や人事担当者は同席させず、私一人がお茶とケーキを出しながら面談する。これまでの勤務についての謝辞から話し始めるが、すでに退職が決まっているので私の質問にも率直に話してくれ、ホテルの改善に役立つことも多い。最後に、今後の再就職の成功を祈っていることを伝え、自筆サインの入ったレターを手渡す。このレターの末尾には、”また私たちのホテルに戻ってきたくなったら連絡してくれ。ホテルはゲートを広げて待っている”と書かれている」彼はこれを “EXIT INTERVIEW”と呼んでいました。

もう一つ思い出すのは、以前ハワイのマカハリゾートホテルの人事部長が持っていた電話帳サイズの「オンコールワーカーブック On-Call Workers Book」です。そこにはこれまで退職した社員の名前、電話番号、ホテル内職歴などがリストアップされており、大規模宴会の予約が入ると、宴会部長と首っ引きで連絡して応援を頼んでいました。退職時に本人の了解を得てリストアップしていたのでしょうが、とても有効に機能していました。

ところでこの記事では退職者を排除してきた日本の慣習を「レガシー」と言っているのですが、この「レガシー」というカタカナ英語は、30数年前にスバルが「レガシィ」という名前の車を発売するまでは、あまり使われていませんでした。私はこれまでレガシーとは遺産、つまり後世に残す価値のあるものという意味でのみ使ってきましたが、IT業界ではシステムが時代遅れになるのは速く、「負の遺産」という意味でも使われるとのこと。今朝の日経新聞も、この後者の意味で用いられています。

私たち日本人は、外来語をカタカナに変換することで簡単に日本語化することが出来るため、その言葉の本質的な意味を深く考えることなく使っているような気がしてなりません。以前もこのオセッカイb.c.c.平信でお伝えしたと思いますが、私は佐世保商工会議所の会報に昨年夏から「知っとっと?こがんカタカナ英単語」というエッセーを連載しています。今月号は「ステークホルダー」と「コンプライアンス」を紹介しています。

≫ コラム一覧へ

ご依頼・ご質問などお気軽にお問い合わせください CONTACT