下村敦史著『ガウディの遺産』

その昔、ガウディが設計したグエル公園で財布をスリに抜き取られた悪夢を思い出しながら一気に読了しました。アマゾンの書評ではケチョンケチョン(ウイキペディアによれば、語源は和歌山県日高郡の方言「けちょに」という説がある)でしたが、私は十分楽しめました。例によって私の読後メモには以下の文章を書き込みました。もしお時間があればご笑覧ください。特に私は3番目の文章にビビビッときました。前を向いて進んでいる限り、年をとっても新しい出会いはまだまだ「アリエール」のだと思いました。

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「問題の中でも特に切実なのは、財政難だ。サグラダ・ファミリアがバルセロナの象徴的建築物になっているとはいえ、特定の宗教の建物には違いないから、国は一ペセタも援助できん。だから信者の献金と観光客の入場料に頼って、何とか進んでいる状態だ。後年のガウディはプライドを捨て去り、知人たちがガウディを見かけると、道を引き返してしまうほどしつこく寄付を求めた。

 外部にも内部にも過剰なほどの装飾が施されている。ガウディは、もし完成したら、一生かけてもすべてを読み解くことが出来ない”石の聖書“を目指したのだろう。

 1878年、パリ万国博覧会に出品されたガウディの作品「手袋を展示するガラスショーケース」が、カタルーニャの実業家グエルの目に留まった。グエルはガウディの才能に惚れ込み、一生のパトロン及び友人となる。 グエルがいなければ、ガウディは世界最高の建築家にはなれなかっただろう」

 「運命的な出会いですね」「私はただの運命とは思わない。そのような出会いというのは、目標に向かって精進し、常に前に進んでいるからこそあるものだ。ガウディが最高の建築を求め、歩み続けていたから、グエルという最高のパトロンと人生が交差したのだ」 「必然の運命ですね」

「サグラダ・ファミリアの真の姿は、巨大な石の楽器だ。聖堂には、生誕、受難、栄光の三つのファサードがある。そして各々四本づつ、計十二本の鐘楼が建ち、数種類の鐘が吊り下がる計画になっている。 そして鐘楼の上半部の窓は全て下方に向かって開けられている。鐘の音がバルセロナの街じゅうに届くようにするためにね。異形の塔は、鐘の音の共鳴ボックスなのだ」

「ガウディはグエル公園を造ったとき、他から土や岩を運んでこず、堀り出したものを積み直して利用した。材質感を統一するためだけでなく、生命尊重の考え方があったからなんだ。こんな話があるよ。階段を予定していた場所にあった邪魔な樹木を職人が切り倒そうとしたときだ。ガウディは「この木がここまで成長した歳月と我々が会談の場所を変更するのに要する時間と、どちらが長いだろう」と言って、会談の位置の変更を指示したそうだ」

バルセロナオリンピック後の観光客の増加によって、サグラダ・ファミリアの入場料収入が激増し、サグラダ・ファミリアは2020年代には完成する可能性が高い。(最近では一部で鉄筋コンクリートが使われるようになっていることも理由の一つである。安徳付記)

2023年、サグラダ・ファミリアがガウディ没後100年である2026年に完成予定であることが公表されたものの、世界に広まったコロナ禍による観光収入の激減により、予定は白紙に帰した。

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