堺屋太一さんの慧眼『団塊の後 三度目の日本』(その二)

では、具体的にどうすればいいか?
① まずは何より政治が主導権を取り戻し、民意が反映できる世の中にすることです。しかし、現行の小選挙区制で議員が多様化しづらいため、難しい。選挙制度自体にメスを入れる必要があるでしょう。

② 地方自治の確立。官僚が主導した東京一極集中によって、多くの企業が東京に本社を置き、その結果、東京にばかり税金が納められているという現実があります。その上、人口減少で空き家が増えれば地方自治体の税収は減るばかり。これを放ってはおいてはいけません。どうすればいいか。やはり道州制を採用すべきです。現在の47都道府県は、明治4年に施行された廃藩置県で誕生したわけだけど、クルマ社会の現代においては、ひとつひとつの府県の区域が狭すぎますよ。憲法改正に関しては9条ばかりが俎上に載せられていますが、地方自治について語られている第8章のことも、もっと議論していかないと。

私はね、日本は2020年以降、3度目のステージを迎えると考えているんです。1度目は明治維新で生まれた「強い日本」、2度目は戦後から高度経済成長やバブル期を経て現在に至る「豊かな日本」。そして、3度目の日本が目指すべきは「楽しい日本」。今の日本に欠けている“多様性”と“意外性”を持つことです。安全、安心、正確、清潔であることは日本の誇りであり、すばらしいとは思いますが、あまりに統制されすぎている。どことなく戦時中に似ているね。言っている内容よりも、みんなが同じことを言っているようで…。

「楽しい日本」にするには、既存の日本のシステムを変えて、ベンチャーが起こる国づくりをしなければ。つまり冒険心と意外性に賭ける楽しみです。そして、ベンチャーは外国人を積極的に受け入れ、その際、外国人には不動産に投資していただく。そうでないと日本に定着してくれませんから。もっと言えば、なるべく国籍を日本にして、お子さんを育てていただきたい。そうすれば人口減少問題も少しずつではありますが改善されてくるはずです。

子育て支援の制度を整備して、子供を産みやすい環境も作っていかないといけないが、だからといってすぐに“産めよ増やせよ”というわけにはいかないでしょう。よって、視点を変えるんです。人材育成のために、スイスのような全寮制の学校を作り、日本に対する愛郷心を持って、根付いてもらう。先ほど申し上げたベンチャーの例と同様に、日本と世界の国境をオープンにするんですよ。そうすることが「楽しい日本」に近づく有効な一歩となるように思いますね。

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