新型コロナ禍 ~過去に学べ~

昨今ポスト・コロナ、ウイズ・コロナを考えるとき「過去に学べ」という声がよく聞かれますね。新型コロナ感染症が勃発する4年ほど前、長崎大学熱帯医学研究所山本太郎教授が全4ページの短いエッセー「人類が直面する新たな感染症の脅威」を書かれていました。中世西ヨーロッパで大流行したペストを主題とした大変示唆に富む内容だと思います。このタイトルでネット検索されることを勧めます。

以下は私が自分の備忘録としてエッセンスを抜粋したものです。もしお時間がなければ、これをお読みいただければ幸いです。特に最後(6)の指摘は私たち一人一人が真剣に考えなければならないのではないでしょうか。

(1)ペストは1347年にコンスタンティノーブルはじめ地中海主要都市で発生し、1349年には北欧、ロシアへと広がった。死者数は2,500万人とも3,000万人ともいわれ、ヨーロッパ全人口の4分の1から3分の1にも達した。

(2)2010年、国際研究チームは、世界各地から採集された17株のペスト菌DNAを解析した結果、共通祖先が中国に起源をもつ可能性が高いこと、その菌がシルクロードを経由してユーラシア大陸の西端まで到達したことを報告した。

(3)ペスト大流行が当時のヨーロッパに与えた影響は少なくとも三つあった。①労働力の急激な減少が賃金の上昇をもたらした、②教会が権威を失い、一方で国家というものが人々の意識の中に登場してきた。③人材の払底が、既存の制度のなかであれば登用されることのなかった人材の登用をもたらし、社会や思想の枠組みを変える一つの原動力となった。

(4)その後、ペストは繰り返し西ヨーロッパを襲った。1966年から1967年にかけてイギリスを襲った際は、ロンドンで10万人の死者を出した。

(5)1920~22年にかけてマルセイユでみられた流行を最後に、西ヨーロッパにおけるペストの爆発的流行は終わりを告げた。都市環境の整備、ペスト菌の宿主であるクマネズミのペストに対する抵抗力の獲得、気候変動、検疫などいくつかの可能性が指摘されているが、なぜ突如大流行が沈静化したのか、今にいたるまで謎なのである。

(6)ヒトの生態系への無秩序な進出と、それが及ぼす生物多様性の破壊は、ウイルスをはじめとする微生物の本来の宿主(住処)である動物の減少や絶滅をもたらしている。結果として、それが新たな宿主としてヒトを求める原動力になったという研究者もいる。微生物も自らの生き残りをかけてこの世界に存在しているのだから、と。

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