『羅生門』再読 推敲

久しぶりに再読しました。さりげなく配置されたキリギリスやカラスなどの小動物も羅生門の凄まじい情景に命を吹き込んでおり、間然するところがない名文ですね。そして最後がまたいい。
「下人の行方は誰も知らない」

この部分【結語】は、それまでに二度改訂されています。
初版(大正4年)
「下人は、既に雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった」
(大正6年)
「下人は、既に雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急いでゐた」
そして現在は、大正7年に改定された「下人の行方は誰も知らない」となっています。

以前、岩手県花巻市「宮沢賢治記念館」で原文が読めない程の推敲の跡が残っている生原稿に感動しました。まるで彼が好きだったベートーベンの楽譜のようでした。芥川龍之介の『河童』や『地獄変』の生原稿もネットで見られますが、宮沢賢治に比べると推敲の跡はそれほど多くはありません。

【結語】「オマエのオセッカイb.c.c.平信、ちゃんと推敲しているんかい?」という声があるとは思いますが、私は最近とみに聴力が衰えており、よく聞こえません。

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