『日中外交秘録 約540ページ』を読了しました。大変エキサイティングな本でした。 著者は外務省チャイナスクールの代表格で、香港領事、台湾駐在、駐中国日本国特命全権大使(2020~2023)を歴任した垂秀夫氏(現在は立命館大学教授)です。私が傍線を引いたところを以下に紹介します。
習近平体制の中国は「国家の安全」を国家の最優先目標にかかげ、それまでの「共産党一党支配」から、「習近平一人支配」へと大きく変わった。毛沢東と同様の神格化が進んでいる。
私は、「戦争」の対義語は、「平和」ではなく、「外交」だと信じている。そして外交とは「言葉」であり、外交の優劣を決めるのは言葉の力である。
中国を見る際に最も根源的な視座は、「なぜ中国共産党が中国を統治しているのか?」ということである。1949年の建国以来、中国共産党はつねに「統治の正当性」が問われてきた。これに対する歴代最高指導者の答えはそれぞれ違う。
【毛沢東】 中国共産党は日本に勝利して中華人民共和国を建国した。(実際に抗日戦争を戦ったのは蒋介石率いる国民党であった)
【鄧小平】 中国共産党は「改革開放」を掲げ、国民の生活レベルを飛躍的に向上させた。
【習近平】 中国共産党は「中華民族の偉大な復興」というスローガンのもと、中国を世界の「強国」にした。
習近平は「腐敗撲滅」の名のもとに権力の一極集中を進めてきた。実力のある若手は排除され、残ったのはいわゆる「茶坊主」タイプの人物ばかりである。
日本人は常に個別の具体的問題の解決にこだわる。日本側は、当面の懸案をテーマに取り上げたがる。一方、中国人は個別具体的な問題よりも、マクロな戦略や大局的なフレームワークの在り方をまず考えようとする。日本側が個別問題を取り上げても、中国側は応じてこないということがままあるのだ。
将来的に中国共産党の支配体制が大きく変容する可能性、さらには崩壊する可能性も視野に入れておかなければならない。仮にそういう局面が訪れた際、果たして誰が中国を変えるのだろうか。それは中国人自身が中国を変えるのである。辛亥革命で清朝を倒したのは、当時の列強ではない。中国人だったのである。
今、中国経済はすざまじい勢いで収縮している。習近平が経済発展よりも「国家の安全」を優先してきたツケがあらわれているのだ。しかも不動産バブルがはじけたことが追い打ちをかけている。こんなときに台湾への武力行使を強行すれば、外資が一斉に中国から逃げ出す。さらに兵士や武器の投入で莫大な戦費がかかるので、中国経済が取り返しのつかない打撃を受けるのは必至である。人民解放軍は内部に汚職が蔓延しており、軍幹部の粛清が続いている。とても戦争を遂行できる状態ではない。
最も可能性が高い選択肢として、「海上封鎖」が浮上する。もし「海上封鎖」をされたら、エネルギー資源や食料の多くを輸入に頼る台湾は非常に弱い。(カロリーベースの台湾の食料自給率は約30%で、これは日本:約41~38%、韓国:約45%に比べても低い 安徳) 世界最大の半導体受託メーカーTSMCが本拠を抱える台湾は、世界の超最先端半導体製造の9割を握っている。海上封鎖により、日本やアメリカをはじめとする国際社会は台湾の先端半導体を入手できず、大混乱に陥る。

