我が国の銀行はしばしば土地・建物などの固定資産を対象とした硬直的な担保至上主義だと言われてきました。ところが今 金融庁では知的財産やビジネスの成長性などの無形資産を担保に融資する「事業成長担保権」の創設が議論されているとのことですね。とてもいいことだと思いますが、どうやらそこではAIの「活用」が前提となっているようです。
土地や建物の担保価値の査定は比較的簡単ですが、成長性や無形資産を分析・評価しようとすれば人手に頼った作業では限界もあり、そこでAIの登場となるのでしょう。しかし、人手不足を理由に「AIの活用」が「AIへの丸投げ」にならないように祈ります。というのも私はあるバンカーが言われた「金はヒト(経営者)に貸すのだ」という言葉が今も記憶に残っているからです。
もう半世紀以上も前、私は大学卒業すぐに父の会社(博多 室内装飾設計施工会社)に入り、取引銀行担当者と父との交渉の場に立ち会う機会が多くありました。その時の印象は、銀行の担当者が父の経営者としての資質を極めて重視していたということです。そのために四方八方にコンプライアンスの眼が光っている昨今では考えられないほど、借り手・貸し手の間に公私にわたる深いコミュニケーションが重ねられていました。私は気づきませんでしたが、今考えると、後継者候補の私も厳しく観察されていたのだろうと思います。