【スチューデント・メイド】
女子学生クリステン・ハディードが在学中に立ち上げた、現役大学生が住宅やオフィスの清掃を行う派遣会社「Student Maid」
完璧さが要求される環境では、メンバーは競争相手なのだ。リーダーも部下も能力の差を隠し、失敗をごまかし、疑いや不安といった感情を抑え込む。これは強靭な組織を築くアプローチではない。しかし残念ながら、完ぺきさは現代社会では当たり前になっている。組織も同じで、多くの企業は、絶対に信頼できると思われるためにあらゆる努力を惜しまない。スキャンダルや世間の怒りを浴びて経営陣が間違いを認めざるを得なくなるまで、一度下された決定は常に正しいのだ。
よくわかった。スチューデント・メイドというチームをサポートすることが、私の仕事だ。彼らの行動を指示したり、彼らの代わりに決断したり、問題を解決するのではない。かれらがガッツと自立心と自信を養う機会を与えること、それが私の仕事だ。
そこで私が新メンバーにやっていた掃除の実技の練習はやめて、掃除道具や技術について説明した後は、経験のあるメンバーと組ませてクライアントの家に送り出した。これは経験のあるメンバーの成長にもつながった。
また詳細な「やることリスト」もやめた。状況を判断して、問題が起きたら対処するところまで、彼女たちに責任を持たせた。任せることが増えるほど、彼らは自立心と自信をつけていった。失敗する余地があり、失敗しても首になる心配をせず自分で解決する。そういう環境をつくることが自分のミッションとなった。ウィン・ウィンの職場だ。しかし、どうしても私の助けが必要な時もあった。その時は出来るだけ早く対応した。ただし、その際も、いきなり私が解決するのではなく、どうするべきだと思うかを本人に訊いた。
スチューデント・メイドで働く学生の多くが、批判されることに神経質になるのには理由がある。そして私の大袈裟な称賛と激励に対する反応が好ましいことにも理由がある。ミレ二アル世代は「参加賞世代」とも呼ばれる。彼らが子供のころは参加するだけでほめられた。サッカークラブに入り、シーズン中ずっとベンチを温めていても、みんなと一緒にトロフィーをもらう。運動会でビリでもリボン。教師からもコーチからも、常に「あなたはすごい、あなたは特別。それでいい」と言われ続けてきた。
そこで「シット・サンドイッチ」と言われる一般的なマネジメントのテクニックも試みた。もうすこし上品な名前でもよさそうだが、相手の嫌がるシット=厄介な事=を伝える際は、かなり効果があった。
最初に褒める(一枚目のパン)
次に具(相手は嫌がるであろう「やって欲しいこと」、や厳しい評価を具体的に伝える
最後に二枚目のパンで、もっと褒める・励ます・期待を伝える