ミヒャエル・エンデ著『モモ』(岩波少年文庫 小学5・6年以上)を読みました。一番感動したのは、翻訳のすばらしさで、ひらがなと漢字の微妙な使い分けにも脱帽です。漢字にはルビがふってあります。なおこの「ルビ(フリガナ)」は日本語フリガナ用の小さな活字のサイズが、イギリスの古い活字の一つ ”ruby” に似ていることに由来しているそうです。宝石のルビーと同じ綴りです。ソンナコトハドウデモイイ! ー こりゃまた、失礼しやした!
この童話のテーマは『時間』ですが、私が読書録『雑記帳』に抜き書きしたのは以下のところです。
(1) 仕事がたのしいとか、仕事への愛情をもって働いているかなどということは、問題ではなくなりました。むしろそんな考えは仕事のさまたげになります。だいじなことはただひとつ、できるだけ短時間に、できるだけたくさんの仕事をすることです。
(2)家をつくるにも、そこに住む人がくらしやすいようにするなどいう手間はかけません。そうすると、それぞれちがう家をつくらなくてはならないからです。どの家もぜんぶおなじにつくってしまうほうが、ずっと安あがりですし、時間も節約できます。そこで大都会の北部には、広大な新住宅街や高層住宅が見わたすかぎりえんえんとつらなっています。
(3)時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。
(4)時計というのはね、人間ひとりひとりの胸にあるものを、きわめて不完全ながらもまねて象(カタド)ったものなのだ。
(5)光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。
なおこの本には、随所にハッとさせられる言葉がちりばめられています。