私は学生時代、いまマンション取り壊しで物議をかもしている国立の富士見通りのすぐ近くで4年間下宿していました。しかし、ことさら富士山の姿を眺めたという記憶がありません。それよりも、月に一度、生活費が送られてきた翌日に富士見通りにあった食堂で食べていたカツ丼のほうをよほど覚えています。
ところで富士山と言えば、御殿場の足柄カントリークラブに行ったとき、富士山の雄大な景観に感動し、キャディーさんにこう言いました。「うらやましいね、いつもこんな美しい富士山が見られて」。
ところがキャディさんは顔をしかめてこう言ったのです。「トンデモナイ! 生まれた時からあんな壁みたいなもんで一方が塞がれていて、息苦しいったらありゃしない。いっそなくなれば、空も広がって気持ちがいいだろうといつも思っています」。
そういえば、長年勤めた全日空ホテルズから長崎国際大学に転職してハウステンボスそばのマンションに入居したとき、(当時は)毎晩花火が打ち上げられていました。「ラッキー、なんて恵まれた住環境なのか」と感動していたのは初めの数日だけ。あとは、「ウルサイ、止めて欲しい」と毎日ぶーたれていました。