山田宗木『人類滅亡小説』(2)

【技術・コンピューター】

 すべての技術は労働からの解放を目指して進歩していく。言い換えれば、技術の進歩は人間から職を奪い、労働の場を奪う。経営者からすると、技術の進歩は人員削減、ひいては人件費の削減につながる。生産の現場では、ロボットに仕事をやらせれば、労働基準法を気にすることなく、理屈の上では24時間、最低限の人員で生産を続けることも可能であり、労災事故の発生も防げる。

 これまでは新技術の開発は新製品を誕生させ、雇用の拡大につながってきた。でも今は全く逆で、スマホのように一つのデバイスに機能が集約されていく時代だ。新技術を活用した製品が現れても、かってほどの雇用は生まない。むしろ縮小させる。

 新技術の出現は、新たな雇用を創出するという人もいるが、別のスキルを身につけるのは言うに易く行うは難しの典型だ。社会に出て、10年も経ったころに勉強をやり直すなんて、出来る人はそう多くはない。このままいけば経営者は、新しい技術を導入して人件費を減らすか、職にあぶれた人間を安く使うのが得かを考えざるを得ない。

 私はインターネットが人類にとって火を使いだして以来の革命的出来事だとさえ考えている。火は人間の暮らしを豊か、かつ快適にした半面、兵器を生み、原子力だってある意味 火 だ。

 三次元の仮想空間をコンピューターネットワークの中につくりあげるメタバースは、クリエーターの能力次第、無限のビジネスチャンスが眠っていると思える。今でこそ専用のゴーグルが必要だが、携帯電話がスマホになったように、ちょっと前まではゴーグル付けてやっていたね、なんて言われる時代になるかもしれない。

 しかしメタバースとかNFT(Non-Fungible Token 偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ 安徳)なんて、高齢化が進んだせいもあって、説明したって理解できない人たちが多くなっている。じゃあ若い世代はといえば、年々減少する一方だ。日本だけを相手に仕事をすることは無理がある。

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