帚木蓬生著『花散る里の病棟』

現役医師が描いた感動的な小説です。アマゾンでは中古本が140円(送料別)で出ていました。

九州で四代続く町医者のオハナシです。特に、フィリッピン戦線で軍医として終戦時まで死に物狂いになって医療行為を行う二代目のはなし(第3章 兵站病院)、そして新型コロナウイルスに遭遇する四代目のはなし(最終章 パンデミック)が大変良かったです。

最終章の一部を紹介します。
「日本政府の大いなる失策は、ワクチン接種を甘く見ていた点だ。元来ワクチン製造が得意だった日本の製薬会社も、この十数年来ワクチン製造をやめ、今ではわずかな企業しかインフルエンザワクチンを作っていない。1990年までは、日本はワクチン先進国で、水痘や日本脳炎、百日咳などの予防ワクチンを米国や中国に技術供与していた。しかしその後、ワクチンの副反応を巡って各地で集団訴訟が起きる。1992年、東京高裁が、予防接種による事故の発生を予防しなかったとして、国と厚生省の過失責任を認める。これによって国も製薬会社もワクチン開発には消極的になった。ワクチン製造には、基礎研究から臨床試験まで数年、長ければ十年かかる。今や新型コロナワクチンに対しては、米国とイギリス、中国、ロシアだけでなく、台湾やインド、そしてあのキューバでさえ、ワクチンを開発しているという。日本は完全にワクチン後進国になり下がっている。」

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