新入社員のコミュニケーション能力不足

虫、金魚、水、朝顔、魚、艾(もぐさ)・・・・これらは江戸時代、それぞれ行商人たちが街中を売り歩いていたものです。市井の人たちと行商人たちとのかまびすしい、しかしいきいきとした日常のやり取りが目に浮かんできます。

70年ほど前、私が御幼少のみぎり、母親から「勝憲、肉屋に行って豚肉100匁(モンメ)買ってきて」と言われ、肉屋にいけば親父さんから「坊や、おりこうだね。これはお駄賃だよ」と小さなコロッケを一つもらっていました。次はどう言ったらコロッケを二つ貰えるだろうか? 子供なりに考えたものです。そこでは単にお金と商品の交換ではなく、間違いなく情報の交換、コミュニケーションがありました。 「三つ子の魂百まで」といいますが、私は今でも早朝ウオーキング時には必ず朝市に立ち寄り、すっかり顔なじみとなっている魚屋さん、漬け物屋さん、野菜屋さんに順に立ち寄って、買い物のついでに一言二言与太話をするのが老後の楽しみのひとつになっています。

いま様々な調査機関が、新入社員に不足しているものとして、「打たれ強さ」とともに「コミュニケーション能力の無さ」を上げていますが、私は子供時代の買い物経験の不足が遠因ではないかと考えています。

しかし、現在、ほぼすべての商品は、極論すればセルフレジの大型スーパーで店員一言も発せずに買うことが出来ます。またEC(ネット通販など)もこの傾向に拍車をかけています。買い物でコミュニケーション能力をつけることが難しい今の子供たちはどうすればいいのでしょうか? 遠回りかもしれませんが、私たちオトナが積極的に声をかけることもいいのではないでしょうか?そのためにはオトナの方も、子供たちが心を開いてくれる表情や態度を身に着ける必要がありますね。

なお堺屋太一さんは著書『団塊の後 三度目の日本』のなかで、少子高齢化の原因として、田中角栄首相が石油ショックで人気失墜してからは、世の中が官僚主導で動いていることをあげています。そして官僚主導によって引き起こされた弊害の一つとして、「流通の無言化」、つまり、おしゃべりをしながら買い物をする小売店ではなく、黙って買い物するコンビニや自動販売機の普及をあげています。

≫ コラム一覧へ

ご依頼・ご質問などお気軽にお問い合わせください CONTACT