私たち人間は他の生物に比べて戦闘力(ゾウやライオンには敵わない)、感覚(犬の嗅覚には敵わない)、本能(渡り鳥の本能のような強固なものは持たない)などは劣っていますが、その代償として超高性能な1.5キロくらいの脳(体重比およそ2.5% 消費カロリーは体全体の約20~25%)を与えられています。
そしてこの脳が実力をいかんなく発揮することで以下のような能力を発揮し、いまのところ私たちを地球上で最も発展した存在にしています。
① 高度な知識と創造性:
人間は抽象的な概念を理解し、知識を蓄積することにより、芸術、哲学、文学などの分野で新たなアイデアや発見を生み出すことができます。
② 社会的結びつきと共感:
人間は他者の感情や視点を理解することができ、他の人々と協力して目標を達成することが出来ます。
③ 言語とコミュニケーション:
人間は複雑な言語を使って思考を表現し、情報を共有することができます。
④ 倫理規範と道徳:
人間は善悪を判断し、倫理的な選択をする能力を持っています。
⑤ 技術と文化の進歩:
人間はツールや技術を開発し、建築、科学などで環境を操作することが出来ます。しかし、脳が創り出したAIが超高速で発達し、人間の能力を超えるレベル(AGI、シンギュラリティ)に近づきつつあります。このため私たち人間はAIのしもべになってしまうのではといった悲観的な見方も出始めています。
私は上記 ①~⑤のうち、④だけは、たとえAIに対して暴力的(例えばラッダイト運動のような)手段をとってでも人間が掌握していかなければならないのではと考えます。皆さんはいかがお考えでしょうか? 明治のジャーナリスト福地源一郎は「一言で国を亡ぼす言葉、それは、”なんとかなろう”である」と喝破しています。やはり人間は今のうちからこの問題に正面から立ち向かっていかなければならないと思います。
蛇足ですが、最近読了した村上春樹著『騎士団長殺し』のなかにこんな文章がありました。 「時間はまだかろうじて動いてはいるものの、進化みたいなものは既に終了してしまったのかもしれない。ちょうどレストランが閉店の少し前に、もう新しい注文を受け付けなくなるのと同じように。」これを読んで私は、先進国に共通して顕在化しつつある少子化、非婚化傾向は、人間の「動物としての種の保存本能」がもう衰退期に入ってしまったことを表しているのではと考えてしまいました。そうでなければいいのですが・・・。