梅雨の晴れ間に恵まれ、念願の足立美術館を訪れました。最近はどんな観光地に行っても、テレビや雑誌などでプロが撮った最高のショットに頭が占拠されており、現地に行ってもあまり感動しませんね。
たしかに今回もそうでしたが、一点だけちがいました。それは庭師さんたちが丹精込めた広大な庭園を眺めた時、まるで邪魔をするように立っていた松の木の視覚効果でした。もちろんこれも写真では見ていたのですが、やはり実際に自分の目で見ることで納得できました。直ぐに思い出したのが直島美術館の地中カフェです。広大な瀬戸内海を見下ろす絶好のロケーションですが、視野を遮るように灌木が配されていました。それにより瀬戸内海の遠景がさらに広がってきます。
その後しばらくすると有名な小窓から庭園を見ることになります。庭園のごく一部がまるで額縁に収まったようにクッキリと見えます。しかし私たちはその前に庭園の全景を見ているので、その小さな景色だけで全体を想像できます。これは以前から数寄屋建築の障子などでも用いられている手法ですね。
一つ残念だったのは、足立美術館では「香り」を楽しむ機会がなかったことです。そう言えば、あるプロの作庭師がこんなことを言っていましたね。「自分の庭にクチナシなどの香りの良い木を植えるときには、家のそばを通る人にも香りのおすそわけをしてあられるような場所を選べ」
なお庭園以外にも横山大観などの作品が展示されていますが、私は「美味しんぼ」の副主人公海原雄山のモデルである北大路魯山人の作品に圧倒されました。蛇足ですが、最近の「美味しんぼ」は当初の魅力が急速に色あせてきて、大分以前から読むのを止めています。