青森の強豪、弘前学院聖愛高校の原田監督は、監督が何でも決める野球では選手が「指示待ち人間」になると考え、ノーサイン野球を貫いてきた。一昨年の甲子園に出場し、今夏の青森大会でもベスト４までいった。 夏の甲子園大会一か月前、この弘前学院と慶応高校（神奈川）は東北高校（宮城）に集い、ユニフォームを取り換えて混成チームで対戦するという趣向で交流を深めた。監督はグラウンドに出ず、選手だけで試合を進めた。監督などおらず、じゃんけんでチームに分かれ、打順も適当に決めて遊んだ少年時代に、選手たちは戻っていた。慶応高校は、この夏激戦区神奈川を勝ち抜き甲子園の切符を手にした。楽しむことと、強くなること ― それらは両立しないものではなく、もとは一つのものだったのだ。
