「『現場力』が強いために、根本的な戦略を見直したり、基本構造を変えたりといったことが後手に回ってきた」
これは埼玉県八潮市の水道管破損事故について日本政策投資銀行社長地下(じげ)誠二社長の言葉です。地下社長は若いころに水道行政に携わり、そのころ「我が国の水道インフラは10年も持たないのではないか」と思っていたが「20年もった。その原因は現場を支える技術者の『現場力』が優れていたからだ」と述べています。
この『現場力』という言葉は、今から25年ほど前、ハウステンボスJR全日空ホテル総支配人のころ、遠藤功氏の講演会で初めて聞いて大変感銘を受け、以来 管理職との会話の際の常套句にしていました。
いまでも私はこの「現場力」の重要性を信じていますが、地下社長が言われていることも現在の日本産業の地盤沈下の大きな要因であると納得せざるを得ません。これは好景気で売り上げ拡大が続いていた時代に日本型マネジメントとして持ち上げられていた「ボトムアップ」が、近年のVUCAの時代にはなかなか通用しなくなってきているということでしょうね。さらに千佳社長は、「近年は高齢化が進み、これまで『現場力』を支えてきた人材が細っていくことで、『現場力』の持続可能性も難しくなってきている」と指摘しています。
事は水道事業のような基幹インフラだけでなく、日本全体にわたる問題です。しかし放っていくわけにはいきません。今の政治は、財政赤字の中でバラマキ合戦になっていますが、危機の今こそ多少の痛みを伴っても大きく舵を切るチャンスととらえてもらいたいものですね。
「ピンチピンチ チャンスチャンス ランランラン」という童謡もあります。