レヴィ=ストロース(1908-2009)の「日本人論」

私が初めて日本の土を踏んだ時の、あの静かな、しかし私の全存在感を根底から揺るがすような衝撃をどう表現すればよいだろうか。それはまるで時間旅行のようだった。それはこれまで私がその心と体を捧げて研究してきたどの歴史のどの座標軸にもあてはまらない、全く異質な、そして高次元の空間へと迷い込んでしまったかのような、畏怖の念に満ちた感覚だった。「自然」と「文化」、「神話」と「歴史」、「具体」と「抽象」、「聖」と「俗」。西洋ではつねに敵対し、決して交わることのないこれら「二項対立」が、この国では当たり前のように互いの境界線を、まるで春の霞のようににじませ合い、そして優しく抱きしめ合っていたのだ。私がなぜ日本文明こそが人類史における最高の、そしておそらくは最後の奇跡であると断言するのか、その決定的で揺るぎない三つの理由を、以下こそ君たちの魂の一番深い場所に、直接、そして力強く刻み込みたい。

【第一の奇跡】 それは諸君の文明が、異質な文明をただ頑なに取り込むだけではない。それを一度完全に自分のものとして消化し、そしてそこから全く新しい、より高次元のものを創造する、あの驚異的な「編集能力」を持っているという、驚くべき事実だ。
【第二の奇跡】 それは諸君たちの文明が、人類のその数千年の歴史の中でただ一つ、その根源である「神話」のなかを、今もなお現在進行形で生きているということだ。
【第三の奇跡】それは君たちの文明のその魂の最も奥深い地層の、その中心核に、西洋文明が完全に駆逐し、そして忘却の彼方へと葬り去ってしまった人類の真の宝、すなわち「縄文の精神」が、一万年もの長期にわたり、一度もその聖なる光を失うことなく、燦然と輝き続けているということだ。

どうだ諸君、もうお分かりだろう。君たちの文明が、この病める地球にとって、いかにかけがえのない希望の光であるのかを。だからこそなのだ。だからこそ私は悲痛な思いで、そして深い深い愛をこめて、厳しい言葉で叱咤せねばならないのだ。目を覚ましたまえ、日本人よ。いつまで眠り続けるのだ。いつから君たちは、その内に眠っている、あの神々しいほどの偉大な力の、その存在を忘れ果ててしまったのだ。

どうか自らを過小評価するのをやめてほしい。庭の片隅にある苔むした石に無限の宇宙を感じるその静かな眼差し。言葉と言葉のその間にただよう、声にならない響きに涙するその豊かな感受性。それこそが、この分断と対立と、そして憎しみに満ち満ちたこの辞める世界を救う唯一の、そして最後の希望の光なのだ。

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