「お客様のために出来る限り努力する? ダメだ! それでは、自分が今できることを超えられない。 そうではなく、一度お客様の立場になって考えるべきだ!」 この鈴木氏の言葉は、マーケティングの基本(川下理論)であり、いまでも「ホスピタリティ概論」で学生に教えています。
ここから24時間営業、系列を超えた共同配送、公共料金取り扱い、コンビニ銀行などの新機軸が次々に生まれていきました。
一方、鈴木氏は店長の現場力を重視していました。本店から送られてくるデータだけに頼るのではなく、店長は自分の店のまわりにいつも目を配る ー 例えば夏の暑い日、近くに道路工事があったら、塩気の多いおにぎりを多めに発注するなど。
こんなエピソードもあります。毎週の店長会議で檄を飛ばしていると、出席者の多くがメモを取っていました。それを見て「ようやく店長たちも自分のことをわかってくれてきたようだ」と喜んでいました。ところが会議後に廊下を歩く社員たちのおしゃべりを偶然耳にしました。「あー、やっと会議が終わったよな。長いよ、いつも。早く頭を切り替えて店に戻らなきゃ。じゃあ、また来週会おう」 これを聞いて、一瞬カッと頭に血が上ったそうですが、ここで諦めてはダメで、やはり同じことを毎週言い続けることが大事だと思い直したそうです。 あのカリスマ経営者でもそうなんだ、とちょっと安心しました。
今朝の日経で初めて知ったのが、「創業メンバーの大半を流通業界以外で編成した」というエピソードです。背景には親会社ヨーカ堂との水面下での確執があったのではと推察します。
実は、私が途中入社した全日空ホテルズも、創立2年目の社員30人の内、ホテル業界出身者は3割以下でした。当時の全日空若狭社長が「これまでにないホテル会社を創るのだから、ホテル出身者数は出来るだけ抑える」という大方針を示していたのです。そのおかげで、ホテル未経験の私も入社できました。
鈴木氏は「自分の考えとお客様の考えにズレが起きた時が自分の引退する時だ」と言っていたそうですが、自分の考えと経営陣の考えのズレが役員人事のトラブルとなって現れ、突然引退されました。 ご冥福をお祈りいたします。

